2026.07 - お風呂と街灯
梅雨がまだ明けきらない、夏の雨の日。
霧雨は街灯の光をぼんやり滲ませ、 古民家カフェの小さな部屋は、 街の気配を切り離してくれるようだった。
いつもどこか満たされない彼が、 その夜だけは雨に紛れて、 この世の喧騒から少しだけ遠ざかれたらいいのにと思った。
他愛のないことを話しながら、 湿気と雨と夜のあいだに、 ほんの束の間の逃げ場所ができればいいと考えていた。
朝になれば、またいつものように時間は進む。
それでも霧雨の夜くらい、 何者にもならずにいられたらいい。